2025.05.27
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技術投稿│感情労働のデジタル化

自己紹介
ニックネーム:かわくん
経験年数:1年
IT系の専門学校でデザインを中心に学び、そこからWeb制作に興味を持ち、現在は主にWordPressを使ったサイト制作に携わっている。
こんにちは、かわくんです。入社して1年が経ちましたが、まだまだ毎日が新鮮で、学ぶことも多い日々です。リモートワークやSlackを使ったコミュニケーションにも徐々に慣れてきましたが、ときどき「なぜか疲れるな」と感じることがあります。
これはエラーやタスクの多さによるものではなく、「感情労働」やその「デジタル化」が影響している可能性があると知り、自分の働き方を見直すきっかけになりました。
そこで本記事では「感情労働のデジタル化」について深掘りしていきます。
感情労働とは
感情労働とはアメリカの社会学者アーリー・ホックシールドが提唱した言葉で、肉体労働や頭脳労働とは異なり、働く際に自分の感情をコントロールし場合によっては抑えながら業務を行うことを指します。
接客業や介護職が代表的ですが、例えば「疲れている」「体調が悪い」時でも相手に安心感や満足感を与えるために笑顔を絶やさないように努める労働です。
近年はリモートワークの増加により、感情労働の概念は対面接客に限らず様々な職種に広がっており、私の職種もその一つです。
感情労働のデジタル化
感情労働はもはや対面だけに限らず、メールやチャットツールなどのテキストコミュニケーションにも大きく関わっています。
表情や声のトーンが伝わらないため、感情や意図を文章や絵文字・スタンプで補い、相手に誤解を与えないよう気を遣う必要があります。エンジニアの世界でもコードレビューや日常のやりとりでこうした「デジタル感情労働」が常に行われているのです。
感情労働とエンジニアの関係性
技術はエンジニアの基盤ですが、本質はそれを活用して課題を解決し価値を提供することにあります。その上でプロジェクトを円滑に進めたりチームの状態を良く保つには技術だけでなくコミュニケーションも不可欠です。
特にテキストベースのやりとりでは言葉選びや表現の仕方が相手の受け取り方に大きな影響を与えます。意図しない誤解を防ぎ円滑な協働を築くためにデジタル上でも感情を調整する「感情労働」のスキルが求められているのです。
感情労働のデジタル化による悪影響と対処法
テキストコミュニケーション特有の問題とその乗り越え方を具体的に見ていきましょう。第一歩は誤解やストレスの原因となる表現例を理解することです。感情労働をデジタル上で担うには単にやさしい言い回しを使うだけでなく相手への敬意や配慮、すれ違いを未然に防ぐための具体的な工夫が必要です。
ここでは自分の実体験を交えながら気をつけている対処法や伝え方の工夫を紹介します。
考えられる悪影響の例
悪い例のメッセージ
「このコード、何でこうなってるんですか?直したほうがいいと思います。」
- ● 相手の意図を無視し一方的な否定に感じられる
- ● 指摘が批判的に受け取られやすい
- ● 冷たく感じられ対話の余地が生まれにくい
エンジニアとして心がけるべき対処法
良い例のメッセージ
「こちらのコードで気になった点がありまして、背景などあればぜひ伺いたいです。」
「○○案もちょっと考えてみたのですが、ご意見いただけると助かります。」
- ● 相手への尊重が伝わる
- ● 一方的な否定を避け対話の余地が生まれる
- ● 協力的な雰囲気が生まれチームワークが良くなる
実体験から学んだこと
あるときコードレビューで自分の書いた処理について「仕様に対してやや論理が合っていない」と指摘されました。
指摘自体は技術的に正当でしたが、頑張って実装した内容を真っ向から否定されたように感じ、内心モヤモヤしました。特に相手のメッセージが断定的だったため、頭では理解しつつも感情的には素直に受け入れられませんでした。
理論的な説明に対して自分の感情がついていかなかったのです。後から冷静に読み返すと、相手はきちんと論拠を持って説明しており対立の意図もありませんでした。むしろ自分が感情的になって視野が狭くなっていたと反省しました。
この経験からテキストの文面だけで反応せず、一呼吸置いて意図を汲み取ることの大切さを学びました。たとえ少し強い言い方に感じてもすぐに防御的にならず「何を伝えようとしているのか」を丁寧に読み解く姿勢が建設的なやり取りには欠かせません。
前提のズレを防ぐ伝え方の例
「仕様の意図を再確認させてください。自分はこう解釈していたのですが、もし違っていたら教えていただけますか?」
「目的によっては別のアプローチもあると思うので、すり合わせできるとありがたいです。」
- ● 議論の前提を揃え無駄な衝突を防げる
- ● 互いの立場を理解しやすくなる
- ● 落ち着いた話し合いの雰囲気を作る
まとめ
Slackやメール、コードレビューのコメントは単なる技術的やりとりではなく、感情のやり取りでもあります。
テキストだけの世界だからこそ、相手に伝わる言葉選びや表現を工夫することが、良いチームづくりやプロジェクトの成功につながります。感情労働のデジタル化を理解し、適切に対処することで、エンジニアとしてのパフォーマンスも向上し、働きやすい環境を作っていけるはずです。
この記事で紹介した内容が、日々の業務やチームコミュニケーションの中で、感情労働のデジタル化という視点から、自分の働き方やコミュニケーションを見直すきっかけになれば幸いです。